失踪について

実習実施者等から失踪した技能実習等に係る聴取票

20181116「実習実施者等から失踪した技能実習等に係る聴取票(取りまとめ集計結果)」にて、2,870名に対する、失踪理由等に関する集計では、失踪の動機として「より高い給料を求めて(67.2%)」との内容が記載されている。確かに技能実習生といえど日本へ働きに来ているのである。より高い給料を求める事は間違いないと考えられる。

「入国後、失踪するまでの期間」では、1カ月以内34名、3カ月以内130名、6カ月以内325名、1年以内723名、2年以内917名、3年以内734名、不明7名との失踪する時期が記載されている。ここで一番失踪者が多く出ている時期は、1年超~2年以内の時期で917名(約32%)ある。しかし、1カ月平均失踪者数を計算すれば、3カ月超~6カ月以内325名(1カ月で考えれば108名)6カ月超~1年以内723名(1カ月で考えれば121名)の数字が気になってくる。

それから「送出し機関に払った金額」では、100万円以上から150万円未満が1100名と最も多く、100万円以上払った生徒が1393名、50万円以上から100万円未満98名とたして、2381名全体の83%になっている。

他にも、「月額給与」「給与から控除される金額」「労働時間」の聞取り集計と、それらに対する「入国前の説明」についての聞取りが行われている。(これら内容はホームページから確認できる内容である。)

何故失踪は起こるのか・・・

前項に、今回の調査での失踪者に対する聞取り調査集計を記載した。上記内容を確認すれば、失踪の動機は「より高い給与を求めて」との理由と思われがちだが、実習生は実習前から自らの給与については理解し、納得していたのである。それは「月額給与」についての説明で確認できる「入国前の説明」で2131名は、給与について「説明あり」と回答しているのである。

他に、「送出し機関に払った金額」についてもよく問題視される。確かに100万円の借金を3年間で返すには、月額約28,000円の返済が必要である。200万円の借金の場合、月額約55,000円である。まぁ、返せない額ではない。また、借金に関しては当然入国前に分かっていたことで、自らが理解した上で技能実習生を選択したのである。正当な理由にはならないはずである。(こうした理由での失踪は防ぎようがないのである。自分勝手な実習生を選んだ。とあきらめるしかないのである。)

とすれば、本当の理由は何なのか、であるが。

本当の理由は、失踪時期で確認出来るのではないだろうか。

「入国後、失踪するまでの期間」で一番気になるのは、3カ月超から1年以内に失踪している生徒が、1048名出ているという事である。月平均116.4名である。

通常3カ月から1年という時期は、仕事に慣れ、仕事に対し勉強することが多く、日々充実した日常を送っている時期である。この時期に失踪を考えるとは、それは仕事に慣れず、仕事に違和感を持ち、日々の暮らしに不満を持ち過ごしている事が考えられる。

また、実習生が感じるように、受入れ先もその様な同じ事を感じているはずである。

当方は、この問題は「受入れ先と実習生とのマッチングの問題」である。と考えている。一概にマッチングと言われてもと思われるかもしれないが、実習生にすれば、面接で受けた会社とは違う、面接で言われた仕事とは違う。と考え自暴自棄に陥ることも考えられるのである。

受入先にすれば「考えていた実習生とは違う。」といった違和感から発生して来ているものである。相手に対する違和感が発生すれば、一緒に仕事をしても面白くない。と考えるようになり、最終的に一緒に仕事をしたくない。と考えるようになるのである。こうなれば、受入先は実習生に冷たく当り、実習生もそれらを感じるようになる。

こうなれば、実習生は我慢するか、失踪するしかないのである。

このマッチングの問題について

どうすれば解決できるのであろうか・・・。

解決策は、やはりコミュニケーションである。お互いが認め合いコミュニケーションが上手くいけば、それら問題は解決するのである。会話が増えれば仕事も進み、仕事が進めば不満も消える。といった具合にお互いの不満が無くなれば、実習生にしても日々の充実を実感できるようになり、失踪について考える事がなくなると思われます。

しかし、「コミュニケーションといわれても」と考える受入先の気持ちもわかります。実際に実習生と「どれほどのコミュニケーションが取れますか」と聞かれれば、「実習生しだい」としか、答えられないのである。受入先が実習生の母国語の勉強をするわけにもいかず、「実習生の実力しだい」になってしまいます。

当方は、コミュニケーション力(語学力)が高い実習生を受け入れるという事が、失踪を未然に防ぐ最善策である。と考えています。

また、コミュニケーション力が高い実習生は、仕事の覚えも早く、現場になれるのも早く、いろいろな面で受入先のメリットには繋がると考えられます。

コミュニケーション力が高い実習生を受け入れるには、

まず、日本語での面接を行いましょう。

日本語での面接を行う事により、日本語の必要性を実習生に意識付けする。

この作業は、面接に合格した生徒に、日本に行くまでの間の学習期間に、より日本語を勉強してもらう意識を持たせる為に行っていただきたい。

また、母国での学習期間中に日本語レベルのチェックをする。

入国後も出来るだけコミュニケーションを取るように、プライベートでも積極的に話しかけてあげる。

コミュニケーションとは、言葉で話すだけではありません。身振り手振りでもお互いが意思疎通出来れば、それはコミュニケーションが取れている。という事です。

当方が考えるに、上記の様な事を実行すれば、失踪というものは少なくなっていくと思われます。